2010年3月/奏玲通信

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2010年3月

室長日和 2010.3.17 (その2)

治療で用いる鍼(ハリ)というのは、どのような形で、どれくらいの太さのものを想像しますか。
 第一に思い浮かぶのは、裁縫で用いる縫い針でしょうか。
 二千年前の中国で編纂された『黄帝内経』という鍼灸治療の書物に、9種類の鍼についての説明があります。それは「九鍼」と呼ばれていて、種々の形状のものがあり、様々な使い方があると書かれています。

 例えば、先端がメスのような形をしていて皮膚を切り開いて膿を取り除くのに用いる鍼があります。あるいは先端が鋭くとがっていて杖のような形をしていて、関節に水がたまったときに、関節の中に深く刺して水を排出させるために用いる鍼もあります。鋒鍼(ホウシン)というのは、三面に鋭利な刃があって、その先端で皮膚を破って、皮膚の下にうっ血して黒ずんだ血液を取り除くのに用いますが、これは現在でも三稜鍼(サンリョウシン)という名前で使われています。。
 中国古代の名医である華佗(カダ)は、麻酔を最初に発明したと言われていて、麻沸散という麻酔薬を使って腹部切開手術をしていたので、「九鍼」も巧みに使いこなしていたことでしょう。
 このように書くと、刃物恐怖症や先端恐怖症の人でなくても、「鍼というのは恐ろしくて、痛そう」というような印象を持たれてしまうかも知れませんね。
 でも「九鍼」は、関節の中に深く刺し入れたり、皮膚や筋肉を切り開くようなものばかりではありません。深く刺したり切ったりしない鍼もあります。
 例えばテイ鍼というのは、「鍼先が粟の粒のように微かに丸く、気の流れに沿って皮膚をなでさすり気の流れを促す」というように書かれています。この鍼は現在も使われていて、私もよく治療に用いています。
 また九鍼の一つの毫鍼(ゴウシン)というのは、極細で繊細な形状です。「毫鍼は針先が蚊やアブのくちばしのような形状で、これを静かにゆっくりと刺してゆき、かすかに刺したら、それ以上は刺さないでしばらくとどめておくと、気を養うことができる。痛みやしびれの症状に効果がある。」というように書かれています。蚊に刺された瞬間というのは、痛くもかゆくもないし、いつ刺されたのかわからないほどですが、毫鍼も、刺された感覚はその程度のものです。
 この毫鍼は現在も広く用いられていて、一般的に鍼と言えばこのことを言います。
 

 献血で用いる注射針の太さは18ゲージから16ゲージです。18ゲージとは、外径が1.2ミリで、内径が0.94ミリです。
 毫鍼の太さは、細いものを1番とし、順に太くなります。一般には1番から5番までがよく用いられています。1番は0.16ミリで、5番は0.24ミリです。
 髪の毛の太さには個人差がありますが、太いものは0.15ミリだそうですから、鍼の太さは、太めの髪の毛よりすこし太いくらいです。注射針の内径が0.94ミリなので、毫鍼は注射針の中に入ってしまうほどの細さです。
 毫鍼の長さは、よく使われているものは1寸3分(約4センチ)と1寸6分(約5センチ)ですから、見た目は縫い針のようです。でも、それよりもずっと極細です。
 一つの道具も、様々な使われ方をする場合があります。例えば一つの楽器も、それを奏でる人によって、様々な音色になるし、クラッシック・ジャズ・ポピュラーなど、千差万別のジャンルの音楽が一つの楽器からわき出ることもあります。
 毫鍼も道具ですから、どのような考え方の元で使うか、あるいは用いる人の技能によって、様々な使われ方がされています。
 では今の時代において、毫鍼という道具がどのような使われ方をされているのでしょうか。
 これは一言では語れないほどに様々なんでして、そのことは次回以降にボチボチと…

 

☆☆編集スタッフのつぶやき☆☆

このコーナーをやろうと提案したときはちょっと迷惑そうだった室長ですが…。ところが、「第2回目の原稿送ったのにまだ更新できてないようですねぇ…」と。実はブログは楽しいらしいのです。更新頑張りますので室長のブログに皆さん付き合ってあげてくださいね

画像 165.jpg治療室前の桜、開花(3月21日)


 

室長日和 2010・3・1号

はり・ハリ・鍼・針…

 今日から始まりました「室長日和」、奏玲通信の「室長の健康アドバイス」とまた違った角度から、日々の治療で思うこと、研究会のこと、思いつくまま綴って生きたいと思っています。

 さてさて今日は「ハリ」のお話。

 治療で用いるハリは、「鍼」という漢字を使います。
 「咸」は、「あまねし」・「すみずみまで広く行き渡る」という意味があり、神様にささげものをした後に大声で神様を呼ぶことを表しているそうです。
 

 金へんですから鍼は金属製で、金・銀・ステンレス・コバルトなどで作られています。金属というのは、ギューっとひきしまって緻密な物質で電気をよく通します。でも電気の「気」だけではなくて、宇宙の原動力となっている天の気や、命の源となっている人体の気をも集めたり流したりします。
 金属を細く細くして、さらに先をとがらせると、その細長いものに気が集まってきて、さらにその先端に気がスーっと収れんします。濃厚な気が集まっている先端を、からだのツボに当てます。そうするとスルスルーっという感じで、気がからだのすみずみまであまねく行き渡ります。
 韓流ドラマで、太くて長い鍼を肩や腰に何本も刺しているシーンがあるらしくて、鍼治療というのは痛そうだし怖いというイメージを持たれている人が多いようです。確かに鍼治療には種々の流派のようなものがあって、太くて長い鍼を何本も刺して、さらにそこにコードをつなげて電気を流してピクピクさせる方法もあります。
 

 でも当院では、そのような方法はしていません。ですから、初めて鍼治療を受ける人などは、最初はビクビクして手に汗をかいていたりしますが(笑)、治療後はゆったり・安心して「気持ちよかったです。全然痛くないんですね。」と言われることが多いです。
 

 鍼は縫い針のような形状なので、刺そうと思えば筋肉の中まで入りますが、そんなに深く刺さなくても効果はあるんです。なぜかというと、治療点であるツボというのは体表の浅い部分にあるからです。からだの表面のところで、気が奥の方からわき上がってくる部分とか、奥の方に流れ込む部分とか、あるいは浅い池のように気が集まっている部分とか、ほんの少しの刺激で大きな作用があるポイントなので、そこに鍼の先端をちょっと刺すだけで、その効果が体内の奥の方まで行きわたります。
 からだにとって必要な気を補ってあげたり、不必要な気を取り除いてあげれば元気になります。必要な気が不足していたり、不必要な気がからだにたまると病気になります。
 

 医療で使うハリと言えば注射針が思い浮かぶでしょう。注射は痛いですよね。そのことからも、鍼治療は痛いものだという通念がゆきわたっているみたいです。
 献血で用いる注射針の太さは18ゲージから16ゲージです。ゲージという単位は数値が小さくなるほど太くなります。18ゲージとは、外径が1.2mmで、内径が0.94mmです。
 では治療に使う「鍼」の太さはどれくらいだと思いますか。
 その答えは次回へ…
 

 

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