2017年8月/奏玲通信

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2017年8月

鍼で治せるものと治せないもの ~ 前世からの課題

2017・8・19ひまわり (縮小).jpg

 鍼を介して天地の気を体内に取り込み、病気の原因となる邪気を体外に放出する。これにより全身すみずみまで生気がめぐり、天地と同じパワーが引き出されて病はいえてゆく。それが鍼灸医学の究極目標です。そうだとすると鍼灸治療はオールマイティー、どんな病気でも治せるという理屈も成り立ちます。鍼灸治療で多種多様な病気が治るのは事実です。でも、どうしても治らない病気があることも事実です。  

 私は網膜色素変性症という病気で30歳代で失明しました。20歳代までは見えていましたが、年齢を重ねるごとに網膜の細胞が変性してゆき、徐々に視野がせまくなり、目がかすんでゆき、やがて見えなくなってゆきました。この病気は現代医学でも治療法がなく、国により指定難病に定められています。  

 現代医学で治らなくても、鍼灸治療により天地の気を取り込み、全身すみずみまで気をめぐらせて、自然治癒力を高めれば自分の目もよくなるのではないか。そう信じて、自分で自分に鍼をしたり、他の治療家からも鍼をしてもらいました。でも、目は一向によくなりませんでした。指定難病の種類は300以上ありますが、そのすべてが鍼灸治療の効果がないわけではなくて、鍼灸治療で効果が期待できる難病もあります。でも私の場合は現代医学でも東洋医学でも効果はありませんでした。  20歳代の後半から三十歳代の前半にかけて徐々に見えなくなってきたとき、まだ見えていたいという見ることへのこだわりを捨てることができませんでした。いよいよ見えなくなったときに、見えないことを自分の人生として受け入れたわけですが、受け入れたということは、見ることへのこだわりを捨ててあきらめたということでもあります。

 「この目と人生をともにする以外に方法はないんだなあ。」とあきらめてしまうと、この目の難病は自分をさらに高い境地へと導いてくれる前世からの宿題のようなものではないかと思えてきました。前世で成し遂げられなかった課題は、宿題として現世に引き継がれます。その課題を解決するために、人生にはいろいろなしかけが仕組まれています。人によって課題はそれぞれ異なります。だからそれを解決するためのしかけもそれぞれ異なります。

 難病というのは前世の悪業が現世において身にはね返ってきた業病だと言う人がいますが、私の目もそれに近いものかもしれません。けれども悪い行いをしたからばちが当たったということではなくて、前世からの課題を解決するために仕組まれたしかけのようなものなのではないかと思っています。前世から現世へ、現世から来世へと引き継がれた課題を解決しながら、人はより高い境地へとステップアップしてゆきます。  目の難病というしかけがあったからこそ、私はこのような人生を歩み、今ここにいるわけです。ここで鍼灸師の仕事をしていること、妻と出逢い家族というきずなを授かったこと、レオやレノという親愛なる相棒を得たこと等々、偶然をよそおいながらも、難病というしかけは常に人生の課題を提示し続けているのです。

2017・8・19雷から避難中 (縮小).jpg

 もしも私の目が治療可能な病気で、今の私が目が見えていたとしたら、鍼灸師の仕事はしていなかったし、妻とも出逢っていなかったし、子供達やレオやレノとも出逢っていなかったし、そうなると現世で解決すべき課題はまったく異なってくるし、そうなるとそれは私の人生ではなくて誰か別人の人生ということになります。だから私と目の病気とは二つで一つのセットメニューのようなもので、それを切り離したら今ここにこうしている私という存在はあり得ないわけです。 大きな病気とか試練というのは、この世に生を受ける前に自分で仕組んだしかけなのです。それが高すぎて乗り越えられないと感じるときもあるかも知れないけれど、それは人生の課題を解決するためには必要な高さなのです。困難であればあるほど、大きな挑戦であればあるほど、その向こうにはより崇高な山の頂が待っています。それぞれの人にそれぞれの課題が有り、それぞれのしかけがあります。人は誰でも、そういうものを持って生まれてくるのです。

 「障害者は不幸を作り出すことしかできない。」と言って、相模原事件の容疑者は人をあやめました。被害に遭った人たちというのは、それぞれの障害があるからこその味わいある人生において、時には苦しみながら、時には悲しみながら、時にはよろこびながら、家族や友人や施設職員とともに困難を乗り越えて、前世からの課題を解決しつつ、さらに崇高な頂へと歩んでゆく途中だったはずです。そういう十人十色の人生をひとくくりにしてあやめるなんて、容疑者はなんと不幸な人なのでしょうか。

 鍼灸治療においては、消し去ることができる病苦と消し去ることができない病苦があります。人生の課題を解決するために仕組まれたしかけは、鍼灸治療では消し去ることはできません。でも課題解決のためのお手伝いはできます。天地人の気の合一、それが東洋医学の根底に流れている理念です。大宇宙(天地)は気によって動いています。小宇宙(人)も大宇宙と同じ気が流れています。鍼の先には気が集まります。大宇宙の気と同じ気を全身すみずみまでめぐらせれば、人の体も大宇宙と同じ力がわき上がり、崇高な頂への道のりも軽やかになります。

   (2枚めの写真は8月19日雷から避難中のレノです。怖くて怖くていつも大騒ぎthundercrying

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